研究
July 18, 2006
ブン系のゴタク
ポスドクのトーステンのPCが突然動かなくなったらしい.すぐそばにエンジニア系の人がいるのに,彼はわざわざ離れた私の所にヘルプを求めてきた.私は文系ということでPCは詳しくないことになっているのだが...Delキーを押しながら立ち上げたり,PCを開いてハードディスクドライブを外したり,マザーボードの設定を確認したり,あれやこれやしているうちに,何とか回復しトーステンと二人でニヤリ.そういえば,最近はPCを開くことも少なくなったものである.
午後は昨日に引き続き,イーストキャンパス「幻の実験室」の片付けの続き.ISAバスにしかつながらないような古い実験機器を使おうとしていたので,廃棄処分になっていた老齢PCに新しいハードディスクやビデオカードなどを移植した老齢移植PCが鎮座していた.OSは既に懐かしのWindows98である.
この古い実験機器は,私がいなくなった後はもう誰も使うはずがない.ってことで,この老齢移植PCは,もとの老齢PCとして廃棄への道に戻ってもらうこととなった.でも,移植物まで廃棄されてはもったいない.そそくさとPCをこじ開け,日の目を見ることのなかった移植物を取り出し,思わずニヤリ.
ああ,これでは何だか「アキバ系のヲタク」(最近はこう言うんでしょ?)みたい.
本当の私は,「ブン系のゴタク」のハズなんだけど.
July 17, 2006
実験室新旧
ジョージアテックから,実験室の改装に関する最終計画書が届いてきた.現在ある部屋の壁,天井,床のすべてに銅板を貼り付けて,その表面にまた壁,天井,床をつけてくれる.こうすることによって電気ノイズを防ぐ大きなシールドルームができあがる.他にもベンチやキャビネットなども付けてくれ,私一人ごときに随分お金をかけてやってくれるなー,と感謝である.
午後からはこちらのイーストキャンパスにあてがわれていた「幻の実験室」の片付け.1年ほど前にこの実験室を私専用に勝手に使っていいと言われ,そこら中から使い古しの実験装置を集めてきて,それなりの実験室にした部屋だ.この実験室を使ってやろうとした研究計画は倫理委員会で何度も問題になり,結局,そのプロジェクトはコロラドでは行わなわれなかった.
せっかく実験できるようにしたのに,私が出て行ってしまうので,すべての実験装置を撤収.息を吹き返させた古参の実験装置達が,日の目を水にまたお蔵入りとなってしまう.私の努力は何だったのだろう,と気が重い.結局なかなか進まず,明日もまたこの非生産的な作業の続きをしなければ.
新旧,対照的である.
July 14, 2006
コロラドでの最終実験
ひと月ほど帰省していたポスドクのトーステンが,ドイツから帰ってきた.ヨーロッパにいたついでに,イタリアでのとある学会にも出ていたという.その学会で日本人研究者にとても親切にしてもらった,そして,そういえばこの前のデンバーでの学会でも日本人に親切にしてもらった,とその感激を私に伝えてくれた.アメリカ人やヨーロッパ人から受ける対応とは全然違うというのだ.私にはよくわからなかったが(ガタイの大きいトーステンに日本人は怖がっていただけなのでは?),自分の国のことを褒められて悪い気はしない.
さて,今日はコロラドでの最終実験.被験者が道に迷ってなかなか到着しないというハプニングもあったが,時間内に無事終了.一緒に実験をしてきた院生のアダム君は,「Shinoにとってコロラドでの最後の実験だね」とか「僕にとってはこちらに来て始めての実験終了だ」とか「写真を取ればよかったなー」とか感慨深げである.
一方の私は,ナゼだか,これが最後だとかそういうおセンチな気持ちには全くなることがなかった.ここを出るまでに終わらせなければならないことが山盛りなので,そのうちの一つが終わった,という安堵感に支配されてしまっていたようである.人間,余裕がないと寂しいものである.
今回のプロジェクトは高齢者をテストする実験で,いつもながら色々な意味で忍耐強さが要求された.普段の見掛けからするととてもセッカチなアダム君だが,それとは対照的に高齢者への対応はとてもよく,おかげで滞りなく実験を終えることができた.我々のようなグループ実験では,一緒に実験をすると,その人のよしあしがよく見えてくる.特に被験者への対応の仕方には,研究者としてあるいは人としての人間性がよく現れてくる.アダム君とはもうすぐお別れだが,今後とも信頼できる研究仲間として付き合っていきたいと思っている.
July 13, 2006
記録達成と大発見?
昨日の帰り道,コロラド大で「英語科学論文の書き方」をしている先生とバッタリ会った.「日本人向けに英語科学論文の添削の仕事をしようかと考えているんだけど,需要はあるだろうか?」と質問を受けた.ほほう,アメリカでは大学の先生もそういう兼職をしていいのか.私自身,この先生の授業を受けて論文の書き方が飛躍的に向上したので,是非,他の日本人にもそういうサービスを受けてもらいたいものである.
さて,今日はヒト筋交感神経活動を測定する実験手法をトレーニングしに,コロラド州立大まで出張(といっても車で1時間).細~い神経を細~い針電極で手探りで探し当てるまでに,一般的には十分~数十分かかることが多いらしい.しかし,このところ私は毎回10分以内で探り当てている.そして,今日は何と1分48秒という最短記録達成! 日本人としてはとても不器用な私だが,もしかして欧米人と比べると器用なのかも?
2人目の被験者では,筋交感神経活動としては望ましくないノイズ信号が混入し,その除去に四苦八苦.しかし,そのうちに実はこれはノイズではなく意味のあう信号なのではないか,と思い始めてきた.大発見は,実験場の失敗から出てくる,というイメージがある.もしかして,これは大発見(につながる)かもしれない.
そそくさとコロラド大に帰ってきて,筋交感神経活動の第一人者であるダグと測定機器についてディスカッションしていると,何と,余っている測定機器をワンセットごと,ジョージアテックに(半永久的に)タダで貸し出してくれるという.私の記録達成と大発見?のお祝いをもらった,と勝手に都合よく解釈してしまうノーテンキな私である.
July 12, 2006
久しぶりの知的な時間
いよいよあと数週間(8/1)で引越し.その直前のもろもろの忙しさにかまけてblog更新をサボりまくってしまっているので,自分にプレッシャーをかけるために,再びblogランキングに参加することにした.なぜそこまでしてblog更新をしなければならないか自分自身よくわからないが...
ともあれ,応援してくれる人は,自然科学人気blogランキングへ.数週間後にはどこかに現れることを期待して.
さて,気合を入れて書こうとするから時間が取れないので,しばらくは,お気楽ショートコースにすることにした.
ここ数週間ほど書類関係の非知的活動ばかりに時間が取られることが多く,今日は,久しぶりにまとまった知的な時間をとることができた.で,やったのは久しぶりの論文書き.きちんと集中して時間をとればそれなりに書き進められることが確認でき,何となく落ち着いた気分になれた.
気分転換にNatureを除いてみると,脳の信号からコンピュータや義手を操れる,という面白い記事が出ていた.似たようなことをテレビでやっていたが,とうとうここまで到達したか,という感じである.ちなみに私が欲しいのは,脳の補助記憶装置.物忘れが激しいので,メモリースティックを脳につなげられないかな,などと考えてみたりしている...今のところ,容量の沢山余っている娘の脳を補助記憶装置として借りたりしてみたりするのだが.
June 29, 2006
友人から実験手法を学ぶ
コロラドにいるのもあと1ヶ月あまりとなってきた.ロジャーは残りの期間はラボの仕事に集中してもらいたいらしく,私がそれ以外の仕事をすることをあまり快く思っていないようである.しかし,ジョージアテックに異動する前に,新たな実験手法(筋交感神経活動の測定)が独力でできるよう,完璧にマスターしなければならない.この実験手法を身に付けているのは世界でも十数人であり,私も途中までの手法には自信があるが,最終的なツメの部分が心もとない.
そこで,ロジャーの出張にあわせ,おとといからの3日間はお隣りのコロラド州立大(車で1時間強)のクリスのラボで集中トレーニングを受けていた.クリスはアシスタントプロフェッサーだが,1年程前まではコロラド大の隣のラボでポスドクをしていた友人である.
友人関係ということで,クリスには無償で色々とお世話になった.被験者の手配を含め,この3日間,クリスはすべての時間を私のトレーニングのために費やしてくれた.今後,彼の使っている専用データ分析ソフトも使わせてくれることになり,また,コンセントフォームや諸々の関連書類をシェアしてくれることになった.おかげで,私の新たなラボでもこの新たな実験手法をスムーズに行うことができそうだ.
また,来週は面白い実験をするので,更なるトレーニングを兼ねてそれにも参加することにもなった.国際レベルの友人研究者から実験手法を学んだり,刺激を受けるのは何とも嬉しく,楽しいものである.恩返しとしは,やはりいい研究をすいることなんだろうな.
June 22, 2006
院生応募予定者のインタビュー
昨日と今日はアトランタ.昨日,新居のクロージングを済ませ,これで日本のマンション,コロラドの家,そしてジョージアの家と,とうとう3件のローン持ち.日本のマンションは万一のための生命保険替わりだが,コロラドの家はそのうちに売れてくれないと...
今朝は6:30にホテルを出てジョージアテックに向かい,7:30からラボの改装について1時間ほど担当者と打ち合わせ.部屋全体を電気シールドしてその表面に新たに天井,床,壁をつけることにした.シンクやキャビネットをつける場所,壁や床の色なども相談し,まるで新居を設計しているかのような気分だ.そういえば誰かが言っていた−「ラボは第2の家だ」とか.「第1の家」にならないように気をつけないと(汗).
その後,近場の院生応募予定者2人とそれぞれ1時間づつ面会.一人は地元ジョージアテックのマスターを8月に終えるドイツ人,もう一人はお隣りアラバマ大のマスターを終えたベトナム人(?).2人とも現在のメジャーはエンジニアリングで,成績や研究業績は優秀である.私の名前だけならこんな優秀な人達は応募してこないだろうから,やはりジョージアテックの名前が効いているに違いない.
彼らの将来目標やこれまでの仕事をインタビューし始めると,彼らが緊張している様子が手に取るように感じ取れる.「これって数ヶ月前の自分の立場だったじゃん」と,妙な気分になってきた.
ドイツ人学生は現在近い分野の優秀なラボにいて,また気さくでいい感じだ.しかし母国の家族との相談やビザの関係などで,応募するかどうかはまだはっきりせず,また秋学期(8月)からの開始は難しくて,始めるなら春学期(1月)かららしい.この学生を採用するつもりなら秋学期からの院生採用を控えなければならないが,もし春学期直前に「やっぱりやめた」と言われてしまったら誰も採用できなくなってしまう危険性がある.一方,ベトナム人学生は私の質問に「Yes, Sir」と答えてくる程の堅苦しい感じだった.彼の興味分野は私のそれとはズレているため,どうもアメリカに残るためにこのポジションを得ようとしているのではないか,と勘繰りたくなってしまったりした.
さて,どうなることだろうか.まあ,私が採用するといってもPhD取得を目指す院生なので,自分の都合を前面に押し出すわけにはいかない.誰かを選んだらその人が希望の方向に進んでハッピーになれるよう,うまく対応してあげるのが我々の役目であろう.
June 15, 2006
査読で学ぶ
ある査読論文の〆切まであと3日.ここ数ヶ月,週1位のペースで論文査読が回ってきている.ジャーナルのエディタにそれなりに評価してもらっているという喜ばしいことなのだが,流石に毎週毎週では自分自身の研究が進みにくい.最近はラボのジャーナルクラブが中断しているからいいものの...
私の所にイマイチの論文が回ってくることが多いのか,これまでの経験ではリジェクト率が8割以上である.リジェクトする場合には,「この人の人生に何らかの影響を与えてしまうかもしれないな」と心苦しく思いながら,それなりにしっかりした理由を書かなければならないので,なおさら時間がかかってしまう.
ところが,今回の査読論文は,ある有名ラボからの論文であった.リジェクトっぽい論文から比べると,論文構成やデータ分析などがしっかりしていて,断然に読みやすい.有名ラボ,論文の読みやすさ,それだけで「この論文はアクセプトになるかな」と,先入観ができあがってしまう.実際,読み進めてみてもマイナーな問題がある程度だったので,論文のできの良さをほめた後にこれらの問題を指摘し,「マイナーリビジョンでアクセプト」という評価でコメントを提出した.久しぶりに,アクセプトのボタンをクリックするのは,気分がよい.きっと他の査読者もアクセプト方向でコメントするだろうと思いつつ,まだ〆切3日前だから他の査読者からはまだコメントが集まっていないだろう,と思っていた.
ところがそれから数時間後,早速ジャーナルエディタからメールが回ってきた.「えっ,みんなそんなに早くコメントを返してるの?」と驚きながら審査結果をのぞいてみた.「査読者達はこの論文にメリットを認めるものの,問題点が多く,このままではアクセプトできない.ただし,リビジョンを許可する」.あらあら,みんなは他にどんな問題点を指摘したんだろう,と興味津々で他の査読者のコメントを読んでみた.
「実験や分析,論文のできはよいが,今回の発見は過去の知見に新しい情報を少し加える程度のものであり,大幅にこの分野の知見を発展させるもののようには思えない」
そう言えば,最近このジャーナルでは,研究内容の重要性について,とても厳しく評価することになっていた.有名ラボ,論文の読みやすさという要素に目を奪われてしまい,肝心なことを忘れてしまっていた(反省).その他,私が指摘したものと同様な問題点の指摘がされていて,ほっとしたりした.しかし,私が気づかなかった他の問題点もいくつか指摘されていた.それなりにレベルの高い人がコメントしたようだ.
「良さそうに見える論文でも,結構問題点が見つかるものだ」と関心する一方で,論文査読は他の査読者から色々学ぶことができる,という重要性に気づき始めた.私と同レベルのあるラボメンバーは数日前にこのラボを出て行ってしまい,まだあまり論文の書けない他のメンバー達とは,論文執筆に関する込み入った話には限界がある.ジョージアテックに行ってラボを構えても最初は院生一人だけなので,実りあるディスカッションはあまり期待できないだろう.
そう考えてみると,査読という作業は,ある論文を通じて同じ分野のレベルの高い研究者と知的コミュニケーションができるとても貴重な機会であることに気づき始めた.学会は年に数回しかないし,レベルの高い人とは簡単には込み入った話ができない.査読とは,ジャーナルエディタが選んだ査読者(研究者)と出会い,ある研究についてディープなディスカッションができるとても大切な機会なのだ.
毎週のように査読が回ってくるのも悪くないか,と新たな思いで査読に望めそうな気分になってきた.机の片隅に置いてある次の査読論文では,どんな出会いが待っているのだろう.少し楽しみになってきた.
June 10, 2006
ジョージアテック
この場で異動先を伏せておくのもそろそろ不自由(=面倒)になってきた.私が8月から勤めるのは,アトランタ市街にあるジョージアテック(Georgia Institute of Technology)という州立工科大である.日本ではあまり知られていない大学であり,私も元文系日本人だけあってこの大学のことはあまり知らず,インタビューの時には学部長に次のような質問さえ投げかけていたのだ.
Shino「工科大だとMITやキャルテックが有名ですが,そことはどう違うんですか?」
学部長「MITやキャルテックは私学,ジョージアテックは公立工科大の中でトップだ」
いくつかインタビューに行った大学の中から,最終的にこの大学に決めたのには,次のような理由があった.
- 所属先はPhDプログラムがメインであり,専門学部教育がない(ただし一般学部教育有,後述).
- 私の専門とする「神経筋による運動制御」に近い研究者が内部および近所(ジョージアテックのBME,エモリー大学の医学部)に沢山いて,盛んに交流している.
- 学科長が同じ分野の研究者であり,私の研究の重要性をよく理解してくれる.
- College of Education(体育はこれが多い)ではなくてCollege of Sciencesに属しているので,研究重視である.
- 大学自体のレベルが高く,教官,学生ともに優秀である.
- 教官,学生のリテンション率が高い(他大学では教官/学生が数年で出て行ってしまうケースがそれなりに多い)
- 便の良い都会にある有名大学なので,外から人(院生,ポスドクなど)が集まりやすい
以上が仕事上の主な理由だが,おまけに生活上として以下のような理由もある.
- 緑が多く,気候が日本と似ている.
- 日本への直行便がある.
- 日本食レストラン(特にラーメン),日本食材グローサリー,日本語補修校などのミニ日本文化が近くにある.
- その割に物価(特に家の値段)が高くない.
この中の目玉は,専門学部生ではなく一般(工科)学生にハイレベルの身体運動教育(体育実技ではない)を行う点である.日本で体育の先生をしている間,「一般学生に学問としての身体運動教育を行うべき」と主張して,研究そっちのけで様々な授業改革活動を行ってきた.体育以外の学問を学ぶ優秀な学生にほど,身体運動の学問を理解してもらって,利用してもらいたかったのだ.ジョージアテックでトップレベルの工科学生に身体運動の学問を理解してもらえれば,身体運動の学問自体のみならず,医学,工学,医用工学など,様々な分野の発展が期待できるだろう.また,ヒトを機械に当てはめてしまいがちな理系特有な思考回路に,人間のやわらかさという視点を組み入れることもできるのではないだろうか.
日本では,一般学生を対象とした身体運動教育が大幅に減少していっている.日本よりも大学改革の進んだアメリカではさらに顕著であり,一般教育は無くしてキネシオロジー(運動科学)という専門学部としてとりあえず体育を生き残らせようとしている大学が大半である.これに対し,ジョージアテックの「PhDプログラムのみ,専門学部教育なし,そのかわりハイレベルの一般教育を選択で行う」という形は,体育の価値としての科学研究と一般教育の両極端のみを具現しようとする理想的なモデルのような気がする.
私自身は,まずは研究で活躍すべきなので,しばらくはPhDプログラムに集中することになる.しかし,それが落ち着いたら一般教育にも力を注いでいきたい.身体運動教育改革の半ばで日本を出てきてしまったが,実は,ジョージアテックのモデルをいつの日か日本が輸入してくれるかも,と夢見ているのだ.
June 07, 2006
ヒト実験の倫理
NIHグラントを異動先の大学に移すためには,移る前に異動先の大学のIRB(Institutional Review Board)を通さなければならない.IRB会議は月に2度あると聞いていたのだが,Websiteを見ると月に1回しかなく,既に今月の提出〆切は過ぎてしまっていた(汗).
慌ててIRBのディレクターに連絡したところ,色々と便宜を図ってくれることになった.この大学のIRBはすべてオンライン申請であり,進んでいるなー,と思ったのも束の間.次々とWebページをくくりながら申請を進めていかなければならず,これがかなり面倒くさい.
コロラドのIRBと比べて特に重点がおかれているのが,被検者の人権について.被験者の中に,以下のような人達を含めるのかどうか,という項目がある.囚人,経済的に困っている人,教育をあまり受けていない人,英語を母国語としない人,妊娠している人,...さらに,そのような人達の人権と福祉を守るため,どのような特別な注意を払うのか記述せよ,などなど.
これは結構ナイーブな問題なので,アメリカで必須となっている「ヒトを用いた実験における倫理」に関する標準教育のCITI(オンライン教育&テスト.アメリカではこのテストを通らなければヒトを用いた実験に参加できない)を参照しながらじっくり考えてみる.
さらに,コロラド大用に書いていたプロポーザルをこちらの形式に合うように書き写さなければならなかった.オンライン申請では,アブストラクト,守秘,プロトコール,リスク・ベネフィットなど,項目ごとにファイルが分かれていたり,求められているものが微妙に違ったりしているので,書き写し作業だけで何時間もかかってしまった.何だかなー,という感じである.
そんなこんなで,IRB申請書の書き写しだけで半日かけても終わらなかった.しかし,IRB一つとっても,複数のものを見るということはためになるものである(と前向きに考えることにしよう).