December 31, 2020
マイナスとプラスと「恩送りですっ!」
とうとう1年に1度にの投稿になってしまったこのブログ.
今年一番の出来事は誰にとっても新型コロナによる影響だろう.世の中にとっても個人にとってもマイナスへの変化が多いことは間違いないだろう.でも,中にはプラスへの変化を得た人もいる.
3月下旬,新体操のアメリカ代表で国際大会出場のためにポルトガルまで飛んだ娘と妻は,着いた空港で大会中止を知らされ,試合に出ずにとんぼ返りという散々な目にあってしまった.
それ以降「おうち練習」の日々が続く中,娘が遊び半分で撮ったダンス動画を気楽にTikTokに出してみると,練習が終わった後に爆発的に拡散されているのを知り「驚き桃の木山椒の木」だった.
これがその時の動画で1,000万回を超えた再生回数になっている.
興奮した娘はその後毎日のようにダンス動画を出していたが,よく知らない私にとって,それは
今年一番の出来事は誰にとっても新型コロナによる影響だろう.世の中にとっても個人にとってもマイナスへの変化が多いことは間違いないだろう.でも,中にはプラスへの変化を得た人もいる.
3月下旬,新体操のアメリカ代表で国際大会出場のためにポルトガルまで飛んだ娘と妻は,着いた空港で大会中止を知らされ,試合に出ずにとんぼ返りという散々な目にあってしまった.
それ以降「おうち練習」の日々が続く中,娘が遊び半分で撮ったダンス動画を気楽にTikTokに出してみると,練習が終わった後に爆発的に拡散されているのを知り「驚き桃の木山椒の木」だった.
これがその時の動画で1,000万回を超えた再生回数になっている.
@elenashinohara always late on trends whoop ##fyp ##foryou ##asian ##rhythmicgymnastics ##추천 #おすすめのりたい
♬ Attention by Todrick Hall - alejandro santos ★
興奮した娘はその後毎日のようにダンス動画を出していたが,よく知らない私にとって,それは
「こんなご時世,家の中で楽しめるものを見つけられてよかった」
翻って私自身にとっての最大の出来事は,2010年から続けていたジャーナルのエディターから身を引いたことだ.
コロナとは全く関係ない.
このジャーナルを改善しようと意識して行動してきた結果,それなりに満足のいく成果が出て,10年間といういい区切りだった.ちょうど国際学会の理事にも選ばれたので,学界への貢献はそちらにシフトしようという考えにもなった.
10年間,ジャーナルを改善するためにこだわって行ってきた仕事は,質の高い査読者のみを選び抜き,投稿論文の質を厳しく評価する,という「嫌われ役」だった.
数えてみたら10年間で283本の投稿論文を担当した.1論文3人の査読者なので,延べ849人もの査読者にお世話になった.依頼しても断られることが多いので,毎週2-3人の研究者を探し依頼していたことになる.査読者にはエディターが付ける裏成績があり,それを利用しながら査読候補者を見つけていくが,狭い分野で良質で引き受けてくれる候補者は簡単には見つからない.
私のエディター仕事は査読候補者の発掘と言っても過言ではないだろう.データベースキーワードから査読候補者になりそうな人達を掘り起こし,その人達の出している論文の質や頻度など,様々な情報を集めて,質の高い論文を評価するにふさわしいかを見極めるという仕事である.
283本の投稿論文のうちアクセプト(採択)したのは65本,リジェクト(棄却)したのは218本,私の採択率は23%だった.これはジャーナルが目指す採択率の範囲内だが,毎月2本の投稿論文にダメ出しをしていたことになる.恩師,知り合い,有名研究者からの投稿論文にもダメ出しをしてきた.「嫌われるだろうなー」と思いながら朝からリジェクト宣告をしなければならない日が何日もあった.
10年間続けたそんな日常から解放されてみると,それがいかに物理的にも精神的にも大変な労力であったかが,身に染みて感じられる.その引き換えは一流のジャーナルの質の向上に貢献したという自負であり,それは研究者として光栄なる満足感である.
そういえば,身を引いた際,チーフエディターから労いのレターをいただいた.
お決まりの表現にすぎないのかもしれないが,労いとお礼の言葉をいただくのは素直に嬉しい.
この10年の間,私からの依頼を引き受けていただいた査読者の方々にもこの場を借りて,感謝の気持ちを表したい.もちろん実際の査読者には伝わるはずがないので,これは自分だけの満足感.感謝の気持ちとして今の私にできることは,依頼された査読をできるだけ断らないようにすることであろう.これまでの査読者への直接の恩返しではないが,「Pay it forward(ペイフォワード)の精神」で社会への恩返しとして.
そう,「ペイフォワードの精神」,受けた恩を施してくれた人に返すのではなく誰か別の人に渡して還元するという精神で,日本語だと「恩送り」となる.
というセリフが流行った.

世の中のために,これをさらに発展させられる.
という,ただの微笑ましい日常の一部であった.
娘のダンス動画は
と,好まれるらしい.
satisfyingとは直訳すると「満たされる」となるのだろうが,ビートにピッタリ合った動きを見るといい気持ちになるのかもしれない.数か月の間にファンがどんどん膨らみ,今やTikTokフォロワー300万人,インスタグラムフォロワー20万人を超える「インフルエンサー」になってしまった.それまでは動画を見て楽しんだり元気をもらっていたのが,今度はみんなにそのような喜びを与える立場になったようだ.
その世界ではクリエーターと呼ぶらしいが,企業や他のクリエーターから次々と依頼が来て,それが仕事になってしまいそうな勢いである.
いつだったか聞いた(確かテニュア取得祝賀合宿ワークショップの時)
という話を思い出す.
体育館での指導機会が少なくなって困っていた妻も,今やオンラインだからこそできる指導法を充実させ,選手達の成長を引き出して楽しんでいる.食料品のオンライン購入で浮いた買い物の時間を料理の充実に充て,娘に影響されてインスタグラムに写真を出して楽しんでいる.それを見た人が影響されて,料理に励むという連鎖も生まれているらしい.
マイナスの状況をしっかりとプラスに変え,人にもプラスの影響を与えている.
娘のダンス動画は
「 satisfyingで,繰り返し見たくなってしまう」
と,好まれるらしい.
satisfyingとは直訳すると「満たされる」となるのだろうが,ビートにピッタリ合った動きを見るといい気持ちになるのかもしれない.数か月の間にファンがどんどん膨らみ,今やTikTokフォロワー300万人,インスタグラムフォロワー20万人を超える「インフルエンサー」になってしまった.それまでは動画を見て楽しんだり元気をもらっていたのが,今度はみんなにそのような喜びを与える立場になったようだ.
その世界ではクリエーターと呼ぶらしいが,企業や他のクリエーターから次々と依頼が来て,それが仕事になってしまいそうな勢いである.
いつだったか聞いた(確かテニュア取得祝賀合宿ワークショップの時)
「マイナスの事件が起きてもそれをプラスに変える力を持つ人が幸せになれる」
という話を思い出す.
体育館での指導機会が少なくなって困っていた妻も,今やオンラインだからこそできる指導法を充実させ,選手達の成長を引き出して楽しんでいる.食料品のオンライン購入で浮いた買い物の時間を料理の充実に充て,娘に影響されてインスタグラムに写真を出して楽しんでいる.それを見た人が影響されて,料理に励むという連鎖も生まれているらしい.
マイナスの状況をしっかりとプラスに変え,人にもプラスの影響を与えている.
翻って私自身にとっての最大の出来事は,2010年から続けていたジャーナルのエディターから身を引いたことだ.
コロナとは全く関係ない.
このジャーナルを改善しようと意識して行動してきた結果,それなりに満足のいく成果が出て,10年間といういい区切りだった.ちょうど国際学会の理事にも選ばれたので,学界への貢献はそちらにシフトしようという考えにもなった.
10年間,ジャーナルを改善するためにこだわって行ってきた仕事は,質の高い査読者のみを選び抜き,投稿論文の質を厳しく評価する,という「嫌われ役」だった.
数えてみたら10年間で283本の投稿論文を担当した.1論文3人の査読者なので,延べ849人もの査読者にお世話になった.依頼しても断られることが多いので,毎週2-3人の研究者を探し依頼していたことになる.査読者にはエディターが付ける裏成績があり,それを利用しながら査読候補者を見つけていくが,狭い分野で良質で引き受けてくれる候補者は簡単には見つからない.
私のエディター仕事は査読候補者の発掘と言っても過言ではないだろう.データベースキーワードから査読候補者になりそうな人達を掘り起こし,その人達の出している論文の質や頻度など,様々な情報を集めて,質の高い論文を評価するにふさわしいかを見極めるという仕事である.
283本の投稿論文のうちアクセプト(採択)したのは65本,リジェクト(棄却)したのは218本,私の採択率は23%だった.これはジャーナルが目指す採択率の範囲内だが,毎月2本の投稿論文にダメ出しをしていたことになる.恩師,知り合い,有名研究者からの投稿論文にもダメ出しをしてきた.「嫌われるだろうなー」と思いながら朝からリジェクト宣告をしなければならない日が何日もあった.
10年間続けたそんな日常から解放されてみると,それがいかに物理的にも精神的にも大変な労力であったかが,身に染みて感じられる.その引き換えは一流のジャーナルの質の向上に貢献したという自負であり,それは研究者として光栄なる満足感である.
そういえば,身を引いた際,チーフエディターから労いのレターをいただいた.
この10年の間,私からの依頼を引き受けていただいた査読者の方々にもこの場を借りて,感謝の気持ちを表したい.もちろん実際の査読者には伝わるはずがないので,これは自分だけの満足感.感謝の気持ちとして今の私にできることは,依頼された査読をできるだけ断らないようにすることであろう.これまでの査読者への直接の恩返しではないが,「Pay it forward(ペイフォワード)の精神」で社会への恩返しとして.
そう,「ペイフォワードの精神」,受けた恩を施してくれた人に返すのではなく誰か別の人に渡して還元するという精神で,日本語だと「恩送り」となる.
「施されたら施し返す。恩返しですっ!」
というセリフが流行った.

世の中のために,これをさらに発展させられる.
「施されたら施し送る。恩送りですっ!」
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