June 13, 2015
名前の英語表記を裁判所で修正
親が夢を託して付けた子供の名前が,思いがけず,強制的に変えられてしまうことがある.
15年前,娘のパスポートを日本で申請した時,英語表記はヘボン式ローマ字しか許されなかった.
我々が付けた「エレナ」という娘の名前は,ローマ字つづりで「Erena」にされてしまい,生後5ヶ月でアメリカに来てみると,「エリーナ」と呼ばれてしまう.
これじゃあ,別の人みたいだ.
「音から入ろう」と何日もかけて決めた娘の名前が,あっという間に否定されてしまった.
家の中や日本人社会ではエレナと呼ばれ,アメリカ社会ではエリーナと呼ばれていたら,アイデンティティの確立にもよろしくない.なので,ビザや保険証などの最重要書類以外は,この十数年,(非公式だが)Elenaで通してきた.
そして今,アメリカ国籍取得により正式にアメリカ人の仲間入りしたのを契機に,アメリカ社会での発音に合う英語表記に直すことにした.
手続きはそれほど難しくない.
必要書類をカウンティのウェブサイトからダウンロード.基本情報と氏名変更理由を入力して印刷し,夫婦の公式署名をした後,申請料$200と新聞掲載料$50を添えて裁判所に提出.「名前変更に異議がある人は連絡するように」というお知らせを地元新聞に2週間掲載するらしい.
待つこと3ヵ月, 2週間後にヒアリングに来るように,との手紙が裁判所から届く.

ヒアリング当日,ハリウッド映画で目にするような裁判所の証言席に立つ.
何も悪いことをしていないはずなのに,その席に立つだけで胸が高鳴る.
「右手を挙げて」と促されたまま氏名を名乗り,嘘の発言をしないことを誓う.
(こういう時,何でいつも右手なんだろう?)
少しずつ冷静になってくる.
名前変更希望の理由を説明すると,裁判官やアシスタント達の顔が柔らかくなってくる.
直後に離婚調停を控えた彼らとしては,わが子を思う案件は,心温まるヒアリングなのだろう.
「You are not xxxxxxxxx?」
年配の裁判官の南部なまりは聞き取りにくく,何をたずねてきているのかわかりにい.Notという単語を耳にして,なにか間違いでもしでかしたかと,気が気でない.
きょとんとした顔を見せて,もう一度質問を促す.
「悪用のために名前変更する,ということではないですよね?」
と言っているらしい.
「Oh, no.」
と微笑み返し,にこやかにヒアリングは終了.
傍聴席に戻ってから5分ほど後,名前変更の裁判所命令書2枚が,重々しく手渡された.
あれから15年,我々が心を込めて名づけた名前=エレナ(Elena)を正式に取り戻した瞬間であった.

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