June 06, 2013
助成金審査のグローバル化−若手教育が組み込まれた研究助成
投稿論文が世界各国の研究者に査読されているように,研究助成の審査も,今や世界各国で審査される.このように研究助成審査がグローバル化してきているということは,各国の研究助成システムの情報もグローバルに知れ渡っていくことに他ならない.
そう,またまた,外国の公的研究助成機関から申請書の審査依頼を受けており,今日はその審査内容をめでたく提出し,ほっと一息ついたところである.
このような依頼を受けるたびに,どうやって外国の機関が私のようなマイナーな分野の研究者を見つけ出すのか不思議でたまらないが,こちらとしては,サイエンスの発展にグローバルに貢献できているような気がして,とても光栄である.
そして,外国の研究助成審査をする一番の楽しみは,その国の研究助成審査システムについて,具体的に経験できる,という覗き見的なオマケである.
まず気になるのは,各助成金プログラムや申請書を采配するプログラム担当者が博士持ちかどうか.
そう,この国も博士号を持つ人がプログラム担当者になっている.ああ,この国にも有識者を活用したシステムができているんだな,と感心したりする.まだ,そのようになっていない国もあるからだ.
そう,この国も博士号を持つ人がプログラム担当者になっている.ああ,この国にも有識者を活用したシステムができているんだな,と感心したりする.まだ,そのようになっていない国もあるからだ.
次に,申請書類の言語.所属などの事務的な項目に関しては,
大学
(University)
というように,現地語の下に括弧つきで英訳がついている.こんなささやかな努力で,現地で書類を扱う人も,私のような外国人査読者でも,無理なく,そして気分よく情報が取得できる.
そして,肝腎のサイエンスの記述.ジャーナルに載せる科学論文と同様,もちろん英語で書かれており,背景,目的,仮説,方法,期待される結果,その重要性,新規性,応用性など,これらは,どこの国でも大差ない.よくある違いといえば,予備データをどの程度必要とするかどうかだが,これは助成プログラムによっても違うので,簡単には比較できない.
さて,今回の審査基準で一番目を引いたのは,「このプロジェクトが参加研究者のキャリア形成に与える影響の重要性」という項目だ.この助成金は特に若手を対象としたものではない.実際,研究代表者も既に経験豊富なシニア研究者であった.
なのに,こんな場違いっぽい審査項目が入っているとはどういうことなのか?
そんな疑問を抱えながら申請書をよーく見てみると,なるほど,研究グループの中に博士号を取り立ての若手研究者が研究分担者として入っており,プロジェクトの一部分を任されている.
そうか.
こうやって,シニア対象の大きな研究費申請であっても若手研究者を入れさせるようにしむけて,「研究費が欲しければ若手研究者もちゃんと育てなさい」,という暗黙のプレッシャーをかけているということか.
こうやって,シニア対象の大きな研究費申請であっても若手研究者を入れさせるようにしむけて,「研究費が欲しければ若手研究者もちゃんと育てなさい」,という暗黙のプレッシャーをかけているということか.
弟子を育てない名人には,お金を与えない.
名人による弟子の教育が自然に組み込まれた研究助成システム.
さすが,徒弟制度の歴史を持つ文化圏が作り出したシステムである.
shinojpn at 10:53│Comments(0)│
│プロフ生活