June 10, 2006
ジョージアテック
この場で異動先を伏せておくのもそろそろ不自由(=面倒)になってきた.私が8月から勤めるのは,アトランタ市街にあるジョージアテック(Georgia Institute of Technology)という州立工科大である.日本ではあまり知られていない大学であり,私も元文系日本人だけあってこの大学のことはあまり知らず,インタビューの時には学部長に次のような質問さえ投げかけていたのだ.
Shino「工科大だとMITやキャルテックが有名ですが,そことはどう違うんですか?」
学部長「MITやキャルテックは私学,ジョージアテックは公立工科大の中でトップだ」
いくつかインタビューに行った大学の中から,最終的にこの大学に決めたのには,次のような理由があった.
- 所属先はPhDプログラムがメインであり,専門学部教育がない(ただし一般学部教育有,後述).
- 私の専門とする「神経筋による運動制御」に近い研究者が内部および近所(ジョージアテックのBME,エモリー大学の医学部)に沢山いて,盛んに交流している.
- 学科長が同じ分野の研究者であり,私の研究の重要性をよく理解してくれる.
- College of Education(体育はこれが多い)ではなくてCollege of Sciencesに属しているので,研究重視である.
- 大学自体のレベルが高く,教官,学生ともに優秀である.
- 教官,学生のリテンション率が高い(他大学では教官/学生が数年で出て行ってしまうケースがそれなりに多い)
- 便の良い都会にある有名大学なので,外から人(院生,ポスドクなど)が集まりやすい
以上が仕事上の主な理由だが,おまけに生活上として以下のような理由もある.
- 緑が多く,気候が日本と似ている.
- 日本への直行便がある.
- 日本食レストラン(特にラーメン),日本食材グローサリー,日本語補修校などのミニ日本文化が近くにある.
- その割に物価(特に家の値段)が高くない.
この中の目玉は,専門学部生ではなく一般(工科)学生にハイレベルの身体運動教育(体育実技ではない)を行う点である.日本で体育の先生をしている間,「一般学生に学問としての身体運動教育を行うべき」と主張して,研究そっちのけで様々な授業改革活動を行ってきた.体育以外の学問を学ぶ優秀な学生にほど,身体運動の学問を理解してもらって,利用してもらいたかったのだ.ジョージアテックでトップレベルの工科学生に身体運動の学問を理解してもらえれば,身体運動の学問自体のみならず,医学,工学,医用工学など,様々な分野の発展が期待できるだろう.また,ヒトを機械に当てはめてしまいがちな理系特有な思考回路に,人間のやわらかさという視点を組み入れることもできるのではないだろうか.
日本では,一般学生を対象とした身体運動教育が大幅に減少していっている.日本よりも大学改革の進んだアメリカではさらに顕著であり,一般教育は無くしてキネシオロジー(運動科学)という専門学部としてとりあえず体育を生き残らせようとしている大学が大半である.これに対し,ジョージアテックの「PhDプログラムのみ,専門学部教育なし,そのかわりハイレベルの一般教育を選択で行う」という形は,体育の価値としての科学研究と一般教育の両極端のみを具現しようとする理想的なモデルのような気がする.
私自身は,まずは研究で活躍すべきなので,しばらくはPhDプログラムに集中することになる.しかし,それが落ち着いたら一般教育にも力を注いでいきたい.身体運動教育改革の半ばで日本を出てきてしまったが,実は,ジョージアテックのモデルをいつの日か日本が輸入してくれるかも,と夢見ているのだ.
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私Emoryで働いております。Atlantaはとてもいいところですから期待して来てください!海が遠い事を除けば大変すみやすい町です。
Emoryの医学部でしょうか?Emoryの生理,リハビリとは密接な関係にあり,そのうちAdjunctポジションを得ると思います.気が向いたらメールください(shinojpn at yahoo.co.jp).