November 08, 2005

NIHグラントあれこれ4

 学会前でメチャ忙しいが,このままだとblog再開にならないので,最近話題のNIHグラントについて書いてみよう.

まず,ロジャーが先週,NIHのstudy sectionにreviewerとして行っていたので,関連情報を.日本にいる人にはあまり関係ないかもしれないが.

・やはり,アメリカの財政状況が悪いため,グラント採択率はかなり悪くなっているらしい.数年前までは25パーセンタイル以下だったらOKだったのが,最近はかなり厳しい.ただしAwarding instituteによってかなりばらつきがあり,NIAだと10パーセンタイル以下だが,私の出したNINDSは15パーセンタイル以下ならOKらしい.

・2007年10月より,応募用紙が現在のPHS398から代わり,すべてオンラインでの申請になる.現在の時間がかかる紙のシステムではコメントをもらってからすぐ次のサイクルにrevisionを出せなかったが,それが可能になる.これは非常にいい方向である.

・やはり,R01(大型グラント)は,1回目の申請で通ることはほぼ皆無で,数回のreviseで何とか通る.

・マニュアルによれば,これまでにR01をもらったことの無い人は,申請書のNew Investigator欄にチェックして(特にpreliminary dataに対して)審査を甘くしてもらえるるはずだが,これは実質上機能してない.そもそも上位15パーセンタイルしかもらえず,さらに著名な研究者が数回リヴァイズして出しているのだから,新参者の入る余地は限りなく小さい.

・あるスタディセクション(MRS)では,PT(理学療法士)のreviewerが増えているため,clinical significanceをかなり具体的に主張しないと,得点が着きにくくなっている.残念だが,そのスタディセクションではscientific significanceだけでは通用しないので注意が必要.私のは違うスタディセクションだったので助かったようだ.

・Reviewerの専門性や理解度にかなり幅があるので,どんな分野の人でもわかるように,平易にわかりやすく書くことが重要.

さて話は変わって,SEさんからの宿題「Revisionのツボ」について書いてみよう.

論文では,reviewerのコメントを何とかかわして自分の主張を通そうとすることが多いだろうが,グラント申請では違う気がする.reviewerからのコメントは限られているが,「ひたすらreviewerの気持ちになる」ことにより,reviewerは一体何が気に入らないのかを明らかにし,コメント以外の部分も大幅に改造してよりよい(=reviewerに気に入られる)申請書に変身させることが重要のようだ.例をあげてみよう.

・「仮説のrationaleは動物実験からきているのでヒトの実験のrationaleとしては弱い」と書いてあれば,申請書のすべてから動物実験に関連する文献を除き,ヒトのみの実験結果から別の方向から仮説のrationaleを組み立てる.このreviewerは動物実験結果をヒトに敷衍するのが嫌いなのである.

・「パワーアナリシスの記述が少ない」と書いてあれば,パワーアナリシスは勿論,その他の統計記述もできる限り詳細に書く.このreviewerは統計にうるさいのである.

・「この仮説はrationaleが弱いので受け入れがたい」と書いてあれば,仮説自体を正反対のものにしてしまう.なりふり構わずである.

もっとも犯してはならない間違いは,コメントに対してdefense的になり,少しだけ変更して,「ほら直したからいいでしょ」と主張しまうことである.私は以前「コメントに対して最低限のreviseしかしていない.けしからん!」というコメントを受けてこれを悟ったのである.考えてみれば,申請書の点数が悪いということは,手先でチョコチョコ変えた程度では,次もいい点数がとれるはずがないのである.コメントを最大限に活用して,全く別の申請書に見えるくらい大幅に改造する.そして,大幅に改造したことをINTRODUCTION(変身欄,じゃなかった返信欄)で主張するのである.必ずしも同じreviewerに当たるとは限らないが,どのreviewerも,前のバージョンのコメントを参考にして,どれだけ変身しているか,というのを見ているのだと思う.

まあ,ここら辺は,科学というよりもビジネスの世界なので,お客様に気に入ってもらうように,なりふり構わず色々な角度からプランの素晴らしさを主張する,ということだろう.こうすると科学者として地に落ちてしまうような気がするが,これはこれ,と割り切ることが大事らしい.グラントで大きなお金をもらって,自分にとって一番大事な研究はそのオコボレで進めていく,というのが現代アメリカの超一流ではない研究者のサバイバルの仕方らしい.



shinojpn at 00:00│Comments(10)TrackBack(1) 研究 

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1. R01の1000件に値するプロジェクト  [ 在米ポスドク癌研究日記 ]   November 10, 2005 12:41
もう3週間も前のScienceになるが、ElledgeとHannonのHHMI investigatorコンビがopen letterという形をとって、ヒトゲノムに関連する超大型プロジェクトへの大規模な投資を批判している。

この記事へのコメント

1. Posted by 浅野英司   November 09, 2005 22:05
SHINO様。グラント獲得およびブログ再開、おめでとうございます。SHINOさまのおっしゃるところの「ビジネスの社会」というお言葉に納得です。お客様目指して頑張ろうと思います。今後とも末永くよろしくお願い申し上げます。
2. Posted by ビンゴ   November 10, 2005 00:34
NIHグラント申請上、リバイスの注意点として、大変勉強になります。貴重な情報をシェアしていただき、ありがとうございます。私も、一刻も早くNIHグラントを手に入れ、独立性を確固たる物にしたいと思います。
3. Posted by SE   November 10, 2005 07:11
大変ためになるお話聞かせていただき有難うございました。「もっとも犯してはならない間違い」をやってしまうところでした・・・大変身した姿を売り込めるよう意識してリバイスしようと思います。大風呂敷を広げるのではなく、説得力のある形でそうする点が難しそうですが頑張ってみます。
4. Posted by Shino   November 10, 2005 20:22
皆さん,私の伝えたかったことを理解していただいたようで,ほっとしました.この情報は,私個人の経験のみならず,これまで複数の人の審査例,リヴァイズ例を見た上でのことなので,それなりに正しいと思っています.サイエンス的視点では論理的かどうか(各aim内,各aim間),ビジネス的視点ではアトラクティブかつ心配がないかどうか,ということがキーポイントのようです.それにしてもNIHグラント取得は長い道のりですよね.
5. Posted by SE   December 04, 2005 02:43
NIH から、new investigator からの再申請が次のレビュー(例:2月に申請した場合6月)に間に合うよう試験的なシステムを導入するとの発表がありました。
6. Posted by Shino   December 06, 2005 09:14
貴重な情報,ありがとうございます.勿論,summary statementも早く返してくれるんでしょうね.どこかのWebsiteに詳しく載っているのでしょうか?
7. Posted by SE   December 06, 2005 12:46
こんばんは、shino さん。↓情報元です。

http://grants.nih.gov/grants/guide/notice-files/NOT-OD-06-013.html
8. Posted by Shino   December 06, 2005 21:21
情報源,ありがとうございます.審査結果も早く返してくれるみたいですが.1ヶ月で手直しができる申請書というのは滅多にないかもしれませんね.ところで,このようなNIH新着情報をemailで受け取れるシステムがあるんでしょうか?
9. Posted by SE   December 06, 2005 22:11
おはようございます、shino さん。↓で登録できます。

http://grants.nih.gov/grants/guide/listserv.htm

インタビュー頑張ってください。心より応援しています!!
10. Posted by Shino   December 07, 2005 21:42
早速登録しました.応援も,ありがとうございます.いい報告ができることを祈っています.

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