May 24, 2005
初心に帰って家を買う
以前,ロジャーに「英語以外で私に足りないものは何?」と聞いたことがある.即座に帰ってきた言葉は,「NIHグラント」の一言であった.やはりグラントがないとアメリカではそれなりの研究者として認められないし,生きていけない.私がアメリカに渡ってきた頃の目的は,世界標準の研究者になることであったが,アメリカに来たからには,アメリカ標準になることもその中に含まれていた.それはすなわち,NIHグラントを取れるようになることである.しかし,このグラントの採択率は,医学生物学系すべてあわせて20%以下である.アメリカ人の優秀な研究者でもなかなか取れないのに,外国人の私がグラントを取ることは,容易ではない.
そうこうして年月が経つうちに,まずは教育職について生活を安定させてから,時間をかけてそのうちにグラントを取ればいいや,と,いつの間にか逃げ腰になっていたのかも知れない.こちらで教育を経験すれば,もし日本に帰った時に役立つだろう,というのは,我ながら一理あるとは思うが,自分自身,後付けのような気もする.よく考えてみれば,まだグラントを取れる力がついていないくせに教育も始めてしまったら,グラントを取る方向からどんどん離れていってしまいかねない.
「グラントの取れない大学教員にはなりたくない」.これは,「世界標準の研究ができない大学教員ではありたくない」という,日本を出てきた時のmotivationとかなり似ている.アメリカにいるからには,「アメリカ標準のことができない大学教員にはなりたくない」のである.
初心に帰ることにした.アパート暮らしでは,いつでも移動できる=いつでも方向性を変えられる,という風に気持ちに逃げ場ができてしまいかねない.郊外で家族の生活を落ち着かせ,このまま研究職として地に足を付かせ,グラント申請にエネルギーを注ぐことに決心した.
そして,とうとう昨日,家を買った.ここ数週間の忙しかった家族の野暮用とは,家を買う様々な準備のことであった.日本にマンション,アメリカに一軒家と,貧乏人のローン地獄だが,家族を道連れにした待ったなしの状況を大きなエネルギーに変えて,初志貫徹に向けて尽力してみたい.そのためにみんなでアメリカにいるのだから.
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この記事へのコメント
1. Posted by YN May 26, 2005 07:50
すごい決心ですね。
先生と私が置かれている状況を比較すること自体,おこがましいし無理のあることですが,それを差し引いて考えても純粋に「すごい」と感じました。
私も将来「研究できない教員」にならないように精進します。
先生と私が置かれている状況を比較すること自体,おこがましいし無理のあることですが,それを差し引いて考えても純粋に「すごい」と感じました。
私も将来「研究できない教員」にならないように精進します。
2. Posted by 在米研究者 May 27, 2005 10:58
大きなお買い物、おめでとうございます。そしてお疲れ様です。
初志貫徹。私は気持ちが揺らいだり迷う時は自分が本当に何をやりたいか、何をやっていれば幸福かを考えて決断することが多いです。そして、結局行き着く答えは「初志貫徹」です。このページからは大きなエネルギーを分けてもらっているような気がして、いつも拝見しています。
初志貫徹。私は気持ちが揺らいだり迷う時は自分が本当に何をやりたいか、何をやっていれば幸福かを考えて決断することが多いです。そして、結局行き着く答えは「初志貫徹」です。このページからは大きなエネルギーを分けてもらっているような気がして、いつも拝見しています。
3. Posted by Shino May 28, 2005 05:41
優秀な研究者であれば,そんなに気合を入れなくてもいいのでしょうが,私はソコソコの研究者なので,何事もそれなりに時間がかかってしまいます.アパート暮らしだと家族はそういう時間を待ちきれないらしいので,思い切りました.
みんな,その人なりの目指す生き方があって,それを追いかけていられれば幸せなのではないかと思います.私の目指しているところは,レベルの高い研究者から見たらまだまだショボイものですが,今はしっかりと根っこを伸ばすことが大切だと思っています.
「大きなお買い物」は本当に疲れました.House Hunting Syndromeと名づけてしまったほどです.実はこの日には終わらずにまだ続編がありますので,そのうちに.
みんな,その人なりの目指す生き方があって,それを追いかけていられれば幸せなのではないかと思います.私の目指しているところは,レベルの高い研究者から見たらまだまだショボイものですが,今はしっかりと根っこを伸ばすことが大切だと思っています.
「大きなお買い物」は本当に疲れました.House Hunting Syndromeと名づけてしまったほどです.実はこの日には終わらずにまだ続編がありますので,そのうちに.